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【鉄道会社の技術職】現役社員にお話を伺いました

【鉄道会社の技術職】現役社員にお話を伺いました

子供が憧れる職業にもランクインする鉄道職員。鉄道ファンに限らず、鉄道にかかわる仕事に就きたいと考える人も多いのではないでしょうか。鉄道会社の仕事といっても、いくつもの部門があり、各部門で様々な職種の人がそれぞれ役割を担っています。

今回は、そんな鉄道会社の仕事のうち、鉄道会社ならではといえる技術職の仕事について現役社員の方からお話を伺いました。



夜勤もある鉄道技術職の仕事

−−鉄道員のお仕事ってたくさんの職種がありますね。さっそくですが、鉄道技術職の仕事内容をお聞きしてもいいですか。

はい。私は今、関西の某私鉄に勤務していますが、所属しているのはメンテナンス部門(橋梁や線路の点検・補修と橋梁の塗装塗替え)と近い将来くるであろう南海・東南海地震に備えた耐震部門(駅舎、橋梁、軌道などの耐震化)が一緒になった部署です。

仕事内容は、大きく分けて直営作業と外注業務があり、それぞれに昼間作業と夜間作業があります。直営作業では二人一組で昼間に橋梁の点検、夜間に線路の点検を行っており、外注業務は耐震工事(駅舎、軌道がメイン)や橋梁の塗装塗替え工事の発注や協議関連業務、工事監督業務を行っています。

−−夜勤もあるんですね。昼間と夜間作業の割合ってどれくらいですか?

ほとんど同じです(笑)。
作業スケジュールがびっしりと組まれていて、この日の昼間はこの作業、夜間はこの作業というふうに決まっているので、部署内の社員が昼夜バランスよく勤務できるようになっています。

−−そうですか。でも、急な用事や病気の時など大変じゃないですか?

夜勤は月8〜12回と決まっていて、基本的に夜勤の次の日は休みになります。部署内の社員は10人程ですが、毎週各自の予定を確認して夜勤の調整をしていますし、体調不良で急に休みたい時にも社員同士でシフト交換をしているので特に問題はないですね。とはいえ、どうしても欠員がでてしまう時はリーダーや役職者が代わりに勤務することで補てんしています。

線路や橋梁、駅舎を常に正しく安全に

−−なるほど、役職者はどこでも大変だ!先程伺った業務について、もう少し詳しくお聞きしてもいいですか。

まず直営作業ですが、線路や橋梁を常に正しく安全な状態に保つために巡視、点検を行う業務です(昼間に橋梁、夜間に線路)。巡視とは実際に線路を歩き以上がないかチェックすることですが、点検では法定点検や社内規定に基づいて各種の検査を行っていきます。点検結果をもとに不具合がある際は補修計画を立てることになりますが、簡単な工事であれば直営作業のなかで施工することもあります。

次に外注業務ですが、ここでは工事計画や設計、積算、協力会社への発注、事前協議に施工管理まで行います。工事は夜間に行うことが多く、夜間工事は鉄道会社特有の営業時間外の停電時間(私の会社は深夜1時〜4時30分)の短時間で行うものなので、施工管理の時は限られた時間内に効率よく安全に工事を行うよう指導・監督します。また、忘れ物ひとつで重大事故につながるため、各工事終了後は必ず現場に忘れ物などがないか確認し、始発電車の通過を見届けると1日の作業が終了です。

夜間の工事監督以外の昼間の業務としては、

  1. 工事現場に近接している管理者(自治体や所轄警察署など)に事前協議を行う
  2. 工事発注業務を行う
  3. 施工業者が決まれば施工方法などの打ち合わせを行う
  4. 自社の安全教育を施工業者に対して行う
  5. 1.の管理者に対して施工協議を行う
  6. 夜間工事を行うため、近隣住民に対して工事案内のチラシを配る

などがあります。

「安全な日常」を支える縁の下の力持ち

−−安全に電車に乗れるのも鉄道技術職の皆さんのおかげなんですね。

自分で言うのもおこがましいですが、縁の下の力持ちといった職種です。通常どおり電車が運行する安全な日常を守る大切な仕事です。私の職場では業務を幅広く担当できるので、責任ある仕事を最初から最後まで任されていることにやりがいを感じています。

−−鉄道会社によって業務の幅で違いってあるんですか?

まず、鉄道技術職は車両保守などを行う<車両技術職>、電気・信号・通信設備の保守を行う<電気技術職>、軌道や橋梁、駅舎の保守を行う<土木技術職>の3つに大きく分かれます。

他社のことを詳しく知っている訳ではないのですが、私が携わる土木技術職で会社によっては直営作業だけでも巡視担当、点検担当と別れているところもあるそうです。また、直営作業、外注業務は別々に担当することが一般的ですね。

やりがいが大きく、給料も安定

−−ということは、普通であれば分担でやってるような業務をほぼ任されていると。やりがい、達成感は大きいでしょうね。この仕事に就いて良かったと思うことは何ですか?

緊張感のある仕事ですが、やっぱり最初から最後まで任されて、駅舎、軌道構造物、橋梁が保全・耐震化され、お客様の安全・安心につながる責任が大きい仕事が出来ることです。

その他では、部署内の社員でローテーションを組むので、意外と休みがとりやすいことも嬉しいですね。つきなみですが、技術職なので営業などと違いノルマがなく、給料が比較的安定していること、基本給や手当、休暇などの福利厚生が充実している点もこの仕事に就いて良かったと感じることです。

−−鉄道会社の年収はどれほどなのですか?

これも会社によって違うと思いますが、私の職場では30代で600〜700万円、役職者となると800〜1000万円くらいです。

−−安定した生活には充分な年収ですね。反対に、仕事でつらいことは何ですか?

夜間工事が多く、事前に近隣の住民の方にはお知らせチラシを配ってはいるのですが、やはり騒音などの苦情があり、お詫び訪問する時は非常につらいです。懇切丁寧な対応が必要となります。

−−技術職でもクレーム対応までされているとは驚きでした。大変なお仕事だと思いますが、「こういう人は向いている」といった適性ってありますか?

まず、体力に自信がある方ですね。多少の苦情があってもへこたれないメンタルも重要だと思います。あと、部署内の社員皆で協力しながら業務や夜勤を行うので、協調性も大切です。私の職場は体育会系の人が多いですね(笑)。

鉄道技術職へ転職するには

−−入社の動機、きっかけは何だったのですか?

私は学生時代に土木を専攻していて、橋を架ける仕事がしたいと思っていたのですが、就職活動の時には建設コンサルタントの求人があまりありませんでした。そんな中、今の会社の求人を見つけ、幅広く業務に携われることに魅力を感じ応募しました。

−−新卒で入社されてから1社に長く勤務されてますが、転職を考えることはなかったのですか?

考えている暇がなかったですね(笑)。
業務が忙しいというのもありますが、責任ある仕事を任されているので、充実して仕事が出来ているからだと思います。他部署では辞めていく方もいますが、私の部署内でもほとんど転職する人はいません。

構造物は経年劣化によってますます補修が必要になり、今は人員が必要な状態です。最近は中途入社の社員も増えています。

−−最後に、鉄道技術職へ転職したい方へアドバイスをいただけないですか。

はい。先程もお話しましたが、鉄道技術職のなかでも土木技術職はこれからもっと人員が必要になってくると思います。新卒採用は毎年やっていますが、それでも人手不足です。

私の会社では若干名(1〜2名)の中途採用を1年に1回程度やってますが、タイミングはバラバラなので、まめに求人は見ていたほうがいいかもしれません。あと、協力会社からコネで入社している社員もいるので、軌道の施工会社で経験を積んでおくのもいいですね。今は若干名の募集ですが、今後は採用人数も増えると思いますよ。

【取材を終えて】

立派な体格で学生時代はラグビーをされていたそうですが、とにかく優しい方で、親切丁寧な受け答えが印象的でした。

鉄道の根底を支える、重大な仕事であるからこそ、鉄道技術職はやりがいも大きいことがよくわかります。中途採用の頻度も高くないので、レア求人で非公開求人となる可能性も高いと思います。

鉄道技術職への転職を目指す方は、求人数の多い大手の転職エージェントや転職サイトを活用して求人を探すと良いだろうなと感じました。